研究概要 |
進化の過程で地球上の生物は、紫外線防御機能を獲得してきた。哺乳動物の紫外線防御機能は、(1)体毛特性依存型,(2)皮膚組織特性依存型に大別される。 体毛特性依存型では、体毛色素により紫外線吸収率を高める体毛の2色階層構造(下層部が黒色)が、野生動物(クチグロナキウサギ,草原黄鼠,砂鼠,アジアシマリス:中国産)で認められ、Wistar rat(白色体毛)と比較し、体毛・表皮の紫外線透過率が有意に低い値を示した。 人工紫外線(UV-B)背部照射による皮膚組織変化では、Wistar ratの炎症性細胞浸潤,浮腫,痂皮形成,繊維化と比較し、何れの上記野生動物の組織変化は軽度で、皮膚組織障害を防御する体毛黒色層の紫外線吸収による効果が著明であった。 上記の野生動物の中でも、生息環境(山岳地,荒地,灌木地,林)による紫外線量と体毛・表皮の紫外線透過率の間に負の相関が認められた。また、環境温度の要因も強く、山岳の寒冷地では体毛が長く,昼夜温度差が大きい荒地では体毛が短く・表皮が厚い結果で、環境に応じ体毛特性,皮膚組織特性を利用し、体温調節にも有効な紫外線防御機能を備えている。一方、何れの野生動物においても、夏期と冬季の紫外線透過率に、統計的有意差は認められなかった。 紫外線曝露が疾病感染に対する影響する実験結果が得られたが、現在追試を行い詳細について検討中である。
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