芳香族炭化水素化合物受容体遺伝子ノックアウトマウスでの発癌感受性に関する研究

1999 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 11670205
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 中鶴 陽子 東京大学, 大学院・医学系研究科, 助手 (00237314)
• 研究分担者: 石川 隆俊 東京大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (30085633)
• キーワード: AhR遺伝子 / 遺伝子ノックアウトマウス / ベンツピレン / 発がん感受性 / 芳香族炭化水素 / p450CYP1A1 / 薬物代謝酵素 / 転写誘導

研究概要

環境汚染物質として注目されているのダイオキシン、ベンツピレン(BP)を始めとする芳香族炭化水素類は体内に入って、細胞内の芳香族炭化水素受容体(Aryl-hydrocarbon receptor;AhR)と会合する事により薬物代謝酵素p450CYP1A1等の遺伝子の転写を誘導する。芳香族炭化水素化合物はp450CYP1A1により代謝を受け、発癌性物質へと転換する。本研究ではAhR遺伝子ノックアウトマウス(AhR マウス)を用いBPに対する発がん感受性について検討した。雄性AhR(-/-)マウス、AhR(+/-)マウス及び正常対照AhR(+/+)マウスについてBP2mgを投与後3日目の皮膚及び肝臓でのp450CYP1A1の発現を検討したところ、AhR(-/-)マウスでは発現誘導は観察されなかった。雄性AhR(-/-)マウス、AhR(+/-)マウス及び正常対照AhR(+/+)マウスについてBP2mgを1日目及び8日目の計2回皮下投与し発癌感受性を検討したところ、AhR(+/-)マウス及び正常対照AhR(+/+)マウスにおいて16週後には100%の動物に肉腫が発生した。しかし、AhR(-/-)マウスは投与後腫瘍の発生は全く観察されなかった。また、雌性AhR(-/-)マウス、AhR(+/-)マウス及びAhR(+/+)マウスの背部皮膚にBP200μgを週一回連続的に塗布し、皮膚腫瘍誘発実験を行ったところ、AhR(+/-)マウス及び正常対照AhR(+/+)マウスでは28週までに93%の動物に扁平上皮癌、パピローマおよびkeratoacantoma等の発生が認められたのに対し、AhR(-/-)マウスでは腫瘍は全く誘発されなかった。

研究成果

• [文献書誌] T, Ishikawa, Y, Nakatsuru, et al.: "Inhibition DMBA initiation of skin cancer by IP6 in vivo initiation-promotion model"Anticancer Reseach. 19. 3479-3752 (1999)
• [文献書誌] T. Kawada, Y, Nakatsuru, et al.: "Precise identification of gene products in hearts after in vivo gene transfection, using sendai virus-coated proteoliposomes"Biochemical and Biophysical Research Communications. 259. 408-413 (1999)
• [文献書誌] H. Nozawa, Y. Nakatsuru, et al.: "Loss of transcription facor IRF-1 affects tumor susceptibility in mice carrying the Ha-ras transgene or nullizygosity for p53"Genes & Development. 13. 1240-1245 (1999)
• [文献書誌] Y. Shimizu, Y. Nakatsuru, et al.: "Benzo [a] pyrene carcinogenicity is lost in mice lacking the aryl hydrocarbon receptor"Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 97(2). 779-782 (2000)