研究概要 |
行動異常誘発性ニトリルの細胞内情報伝達機構及びアポトーシスカスケードへの作用を調べ、以下の成績を得た。 1.ニトリル投与動物における神経毒性発生機序・行動異常発生機序 (1)Immediately early gene c-fos産物のFos蛋白質は神経系では神経細胞活性化あるいは細胞死の指標として用いられている。ニトリル投与動物では、前庭神経核を含む若干の神経核に投与1.5時間後から30日後までFosの発現が免疫組織化学的に確認された。特にFosの発現が30日後まで認められた神経核は前庭破壊後に観察されるFos発現神経核に一致していたので、ニトリルの前庭障害作用が推定され行動異常発生との関連が示唆された。 (2)ニトリルのアポトーシス以外の作用をみるため、ニトリル投与動物でのγ-aminobutyric acid(GABA),tyrosine hydroxylase(TH),choline acetyltransferase(CAT)を免疫組織化学的に検索した。TH、CATは対照との差はなかった。GABAは黒質を含む若干の神経核で投与2日後には変化はないものの、14日後に増加が観察された。この特異的なGABA変化は行動異常との関連が想定されるが、その生理学的意義は今後検索予定のserotonin及びserotonin transporterの免疫組織化学的成績を考慮後に考察する。 2.培養細胞(PC12細胞)におけるアポトーシスカスケードの解析 神経栄養因子(NGF)はニトリルがもたらす、形態学的な核の断片化及びDNAの断片化を指標としたアポトーシスを高めた。また、in vivoでの成績と一致してニトリルはcaspase-3活性を高めた。今後、caspase-3、cytochromec及びpoly(ADP-ribose)polymeraseのwestern blotを行い、caspase-3に至るカスケードと下流のカスケードの双方を検索する予定である。
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