研究概要 |
行動異常誘発性ニトリルの細胞内情報伝達機構及びアポトーシスカスケードへの作用を解析し、以下の成績を得た。 1.synaptic marker及び細胞内情報伝達系の変化 前年度にひきつづき、5つのsynaptic marker(γ-aminobutyric acid(GABA),tyrosine hydroxylase(TH),serotonin,serotonin transporter and choline acetyltransferase)の変化を免疫組織化学的に詳細に検討した。アリルニトリルは5神経核(medial habenula, interpeduncular nucleus, substantia nigra,dorsal raphe nucleus, median raphe nucleus)にGABA染色性変化をもたらした。GABA染色の程度はmedial habenulaを除くこれらの神経核で投与後2日目で減少し、全ての5神経核で14日目で増加していた。アリルニトリルはまたarcuate nucleus, substantia nigra pars compacta, locus coeruleus, caudoventrolateral reticular nucleusに投与後2日目あるいは14日目でTH染色性変化をもたらした。これらの結果からmedial habenula-interpeduncular nucleus-raphe nuclei路とsubstantia nigraを介したGABA系の異常と行動異常との関連が示唆された。 2.培養PC12細胞におけるアポトーシスカスケードの解析 アリルニトリル(5mM)は培養12時間後に核濃縮とDNAの断片化をもたらした。ヘキスト33258染色で評価された、アリルニトリル誘発性アポトーシスはcaspase-3阻害剤で抑制された。アポトーシス出現に一致して、caspase-3活性の増加、活性型caspase-3(p17)の増加、ミトコンドリアからのcytochromecの遊離の増加、内在性caspase-3の基質poly(ADP-ribose)polymeraseの分解の増加が確認された。これらの結果からアリルニトリルはcytochromec-caspase-3経路を介してアポトーシスをもたらすことが示された。今後、cytochromecの遊離を調節するbcl-2 familyに焦点をあてた研究が必要である。
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