研究概要 |
II型肺胞上皮細胞(II型細胞)がFas/Fas ligand(FasL)を発現するか、するとすればサイトカイン刺激でその発現が変化するかを検討した。さらに、発現したFasLがアポトーシスを誘導する機能があるかどうかを検討した。 【方法】Dobbsらの方法に従いラットからII型細胞を単離し、1日培養後培養槽に付着した生存細胞を計数した。このII型細胞から蛋白を抽出し、Fas/FasLの発現をWestern blotおよび免疫細胞染色で検討した。また、抽出したRNAについてFas/FasL mRNAの発現をRT-PCRで検討した。II型細胞に発現したFasLの機能を見るために、Fas陽性のJurkat細胞を加え6時間co-cultureし、Jurkat細胞を回収し、Dapi染色によりアポトーシスの頻度を計測した。次に、II型細胞にLPS,TNF-α,IL-1β,IL-8を加え刺激し、同様にFas/FasL、同mRNAの発現を検討し、Jurkat細胞に対するアポトーシス誘導を計測した。アポトーシス誘導がFas/FasL系を介することを確認するために、抗FasL中和抗体(NOK-1)で前処置したときのアポトーシス抑制についても検討した。 【結果】1)非刺激II型細胞から抽出した蛋白のWestern blotでFasおよびFasLが検出され、免疫細胞染色でもFas/FasLの発現が確認された。同細胞から抽出したRNAのRT-PCRではFas/FasL mRNAが検出された。 2)II型細胞をあらかじめサイトカインで刺激しておくとFas/FasLの発現は増強した。(LPS<TNF-α<IL-8<IL-1β) 3)非刺激II型細胞とco-cultureしたJurkat細胞の約5%にDapi染色により核の断片化が見られ、アポトーシスが誘導されていることがわかった。II型細胞をあらかじめ上記サイトカインで刺激しておくと、Jurkat細胞に対するアポトーシス誘導の頻度は有意に増加した。(LPS8%,TNF-α 17.5%,IL-1β 20%,IL-8 22%) 4)培養液中に抗FasL中和抗体であるNOK-1をあらかじめ加えておくと、サイトカイン刺激II型細胞とのco-cultureによるJurkat細胞へのアポトーシス誘導増加の約80%は有意に抑制された。 【まとめ】ラットII型細胞は非刺激状態でもFas/FasLを発現しているが、各種サイトカインの刺激により発現が増強した。このII型細胞はFas陽性Jurkat細胞にアポトーシスを誘導し、発現したFasLは機能を有していることが確認された。さらに、抗FasL中和抗体の前処置でこのアポトーシス誘導が抑制されたことは、Fas/FasL系が特異的に関与していることを示した。
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