研究概要 |
現在行われている抗アレルギー療法は肥満細胞からの化学伝達物質の生成、遊離抑制を狙った抗アレルギー薬による治療が主体である。しかし、これらの治療法のみでは十分な治療効果が得られない場合が多く、他の抗アレルギー療法の開発は重要な課題となっている。臍帯血CD34陽性細胞からのstem cell factor(SCF)単独刺激による肥満細胞産生システム(Sawai,Koike et al.,BLOOD;Kinoshita,Koike et al.,BLOOD)を用いて、レチノイド、ビタミンD誘導体、FK506などの免疫抑制剤などによる肥満細胞の増殖分化および化学遺伝物質やサイトカインの産生、遊離に対する影響を検討した。これらの中で、レチノイン酸をSCFとともに培養10週目の培養肥満細胞に加えたところ、用量依存性に明らかな増殖抑制効果が認められた。また、至適濃度のレチノイン酸は肥満細胞内のヒスタミン量をも減少せしめた。RT-PCRによる解析では、肥満細胞にはRARα,RARβ,RXRαおよびRXRβなどのレチノイド受容体のmRNAが発現していた。各レチノイド受容体に選択的に作用する合成レチノイドの増殖抑制効果を比較したところ、レチノイン酸は主にRARαを介して作用することが判明した。これらの研究結果により、レチノイン酸は肥満細胞の増殖過程を阻害し、アレルギー疾患患者の肥満細胞の絶対数を減少せしめるまったく新しい抗アレルギー療法となりうることが示唆された。
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