研究概要 |
糖原病III型(GSDIII)はグリコーゲン脱分枝酵素(AGL)の遺伝的欠損症で、臓器に異常グリコーゲンが沈着し、多彩な臨床症状を呈する代謝疾患である。私達はGSDIII型患者を解析し、日本人のAGL変異について分子遺伝学的な検索を行なっている。今年度はIIIa型患者の遺伝子解析を続けて、8家系から9つの異なる遺伝子変異を同定した。 1.8家系9人のGSDIII患者からゲノムDNAを調製し、AGL遺伝子の35個のexonとexon-intron接合部、promoter領域の塩基配列をdirect sequencingにより決定した。その結果、ナンセンス変異1(L124X)、塩基欠失3(587delC,2399delC,4216-4217delAG)、塩基挿入1(2072-2073insA)、スプライシング変異3(IVS14+1G>T,IVS29-1G>C,IVS33+5G>A)、塩基重複1(4735-4736insTAT)の計9個の遺伝子変異が見つかった。 2.北アフリカのユダヤ人患者の大多数は共通の遺伝子変異(一塩基欠失)を持つという報告があるが、対照的に日本人患者のAGL遺伝子変異は多様であることが本研究で明らかになった。 3.ヒト、ウサギ、酵母などの異なる種におけるAGLcDNAをホモロジー検索すると、蛋白のC末端にグリコーゲン結合部位が想定された。塩基重複(4735-4736insTAT)を同定したGSDIII型患者では、チロシン残基が挿入(Y1445-1446ins)されるため、グリコ-ゲン結合部位の高次構造が変化して酵素作用が障害されると考えられる。
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