色素性乾皮症(XP)は紫外線によってDNAに生じた傷を修復する酵素を欠損するために、日光露光部に皮膚癌を生じる、高発癌性遺伝疾患で日本では除去修復能が低く、露光部の皮膚癌の発症も早く、神経症状を伴う相補性A群が多い。ヒトへの遺伝子治療を目指して、まずXPモデルマウスでの遺伝子治療の開発を行った。導入する遺伝子は将来のヒトへの応用を目指すのでヒトXPA遺伝子とした。最近遺伝子導入のひとつの方法として効率の高い導入が可能とされているHVJリポゾームにXPA遺伝子を封入してXPAマウス細胞へ導入し、修復能の回復、細胞への傷害性の程度を分析し、XPA-HVJ-リポゾームの効果を評価した。ベクターはサイトメガロウイルスのエンハンサーとβ-actionのプロモーターをもつpCAGGSにヒトXPAcDNAを組み込んだpCAGGS-XPA並びにpcDNA3のEcoRIサイトにXPA遺伝子を組み込みHAtagをつけたpcHA-XPAを用いた。XPAマウスは大阪大学田中亀代次博士より供与を受けた。ベクターののHVJ-リポゾームへの封入には大阪大学金田安史博士の協力を得た。予め紫外線照射24時間前にXPA-HVJ-リポゾームをXPAマウスの背部皮膚に皮内注射しておき、同部のUVB4kJ/m^2紫外線照射後のUDSを測定した。同時に照射4時間後の皮膚片でのピリミジンダイマー、(6-4)光産物の修復動態をそれぞれに特異的なモノクローナル抗体(金沢大学二階堂博士より供与)を用いて確認した。XPA-HVJリポゾームはコントロールリポゾームに比して明らかに紫外線照射後の不定期DNA合成能(UDS)の回復をさせ、表皮、真皮ともにダイマー、(6-4)光産物の染色性が低く、HE染色組織標本においても表皮細胞の壊死などの変化が少なかった。ヒトXPA遺伝子がin vivoのマウス細胞で働くことが確認された。今後は最適な投与方法などの検討が必要である。
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