研究課題/領域番号 |
11670870
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
平野 和也 東京大学, 大学院・医学系研究科, 助手 (80251221)
|
研究分担者 |
松本 義久 東京大学, 大学院・医学系研究科, 助手 (20302672)
鈴木 紀夫 東京大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (10010050)
|
キーワード | MUC1 / 放射線 / 腫瘍抗原 / 放射線応答 / ムチン / X線 |
研究概要 |
「目的」;放射線照射に応答して細胞は様々なタンパクを発現することが知られている。近年、種々の接着分子、表面抗原の誘導も報告されているが、情報は少なく生理的意義についても未知である。そこで私は放射線ストレス応答を解析する上で、血清マーカー(腫瘍抗原)として臨床的に用いられており、またサイトカインや抗ガン剤等により発現が増加する分子であるMUC1ムチンに注目し、放射線照射後の発現及びREB測定することとした。 「材料と方法」;細胞はヒト大腸癌細胞株HT29を用いた。細胞の放肘線感受性については、コロニー形成法及び色素排除法で解析した。細胞の生存率やMUC1測定にあたっては、X線6Gy(炭素線3Gy)照射後1〜4日、又はX線1〜10Gy(炭素線0.5〜3Gy)照射後4日の細胞及び培養上清を用いた。照射後HT29胞培養上清中に蓄積したMUC1量をELISA法で、細胞に結合しているMUC1量を蛍光免疫染色法、FCM及びwestern法で、成熟型MUC1を認識するmAb MY.1E12を用いて調べた。 「結果と考察」;HT29細胞のSurvial curveは、X線照射に対して肩のある曲線となり(D0=1.56Gy,Dq=2.6Gy)、炭素線照射に対しては肩のない直線となった(D0=0.8)。放射線照射による細胞生存率は線量及び時間に依存して減少した。HT29細胞培養上清中のMUC1はX線、炭素線照射後、線量・時間依存的に増加した(ELISA法)。MUC1染色陽性細胞の割合は6Gy照射4日後では52%±3.5(n=6)、非照射では26%2.8(n=6)であった(蛍光免疫染色法)。X線、炭素線照射後、HT29細胞をmAb MY.1E12及びFITC標識二次抗体で染色したところ、平均蛍光強度が時間・線量依存的に増加した(FCM法)。X線を基準にした炭素線の生物効果比は約2であった。Western法で調べた結果、両方のアリル由来の成熟型MUC1(500kDa及び390kDa)がX線照射後、時間・線量依存的に増加した。以上の結果よりHT29細胞のMUC1は放射線(X線、炭素線)照射により細胞の生存率の減少に応じて、in vitro、in vivoにおいて時間・線量依存的に増加することが判明した。MUC1の増加の生物学的意義、およびMUC1の増加が放射線照射の生物効果指標になりうるかについては、さらなる検討が必要である。
|