ヒト陰茎海綿体組織を用いて低親和性神経成長因子受容体(LNGFR)と一酸化窒素合成酵素(NOS)含有神経の局在比較を免疫組織学的に検討した。陰茎勃起にはNOSが重要な役割を果たすとされているが、NOS神経との比較を行うことにより陰茎海綿体におけるLNGFRの機能を推測することを目的とした。用いた抗体は抗ヒトLNGFR抗体、抗ヒトendotherial NOS(eNOS)抗体、抗ヒトneuronal NOS(nNOS)抗体で、またNADPH diaphorase染色も併せて行った。LNGFR陽性神経は海綿体内に広く分布し、海綿体内の動脈周囲に豊富に存在していた。NADPH陽性神経も海綿体内に広く分布していたが、動脈の中外膜に発現していた。eNOSは海綿体平滑筋、海綿体洞内皮、動脈内皮に発現を認め、nNOSは海綿体平滑筋が淡く染色され、その中に神経構造が確認された。これらの結果より、LNGFRとNADPH陽性神経、eNOS、nNOSの分布状況は異なることが判明し、よって勃起機能におけるLNGFRの役割はNOSによる陰茎海綿体の弛緩作用とは別の機能を果たしている可能性が示唆された。膀胱におけるLNGFRの分布より、知覚神経としての機能が示唆されたことを考慮すると、陰茎におけるLNGFRも同様の機能を果たしている可能性が高いと考えられた。一方タヒキニン神経についての検討は抗体を変えて免疫組織染色を行ってみたものの、その発現を確認できず、今回の検討項目から除外した。
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