我々は本年度の研究においては以下の各項目に関して遂行してきた。 1.前立腺ガン患者における前立腺特異抗原(PSA)molecular formと病理学的特性の検討 前立腺ガンの診断において血清PSA(total)の有用性が認められているが、PSA molecular formといわれるfree PSAあるいはfree/total PSA 比(F/T比)、α1-antichymotrypsinとの結合型(PSA-ACT)の有用性が検討されている。またPSAを前立腺容積あるいはtransition zone容積で割ったPSA density(PSAD)PSA adjusted for the transition zone volume(PSATZD)の有用性も検討されている。そこで、PSA molecular form と前立腺全摘標本の容積及び Gleason scoreを検討するとfree/total PSA比およびPSA adjusted for the transition zone volume(PSATZD)に相関関係を認めた。 2.前立腺ガンにおける増殖因子の手術標本における検討 前立腺全摘標本におけるインシュリン様増殖因子を含む増殖因子抗体を用いて免疫組織染色をすることによりその局在と染色性を前立腺ガンの病理組織像と対比した。その結果標本数が少ないものの悪性度および前立腺における臓器内での進行度により各増殖因子が濃染される傾向にあった。今後は、標本数および各種増殖因子を用いて検討する予定である。
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