研究概要 |
前回我々はgestational hormoneの一つであるコルチゾールが肝糖新生に関わる律速酵素として重要な酵素であるホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ(PEPCK)遺伝子の転写調節を誘導することを報告し、さらにsteroid hormone superfamilyに属するchicken ovalbumin upstream-transcription factor I(COUP-TFI)のC-terminal領域がコルチゾールによるPEPCK遺伝子転写促進に必要であることを示した。今回はさらにCOUP-TF1の転写誘導因子としての機序について検討した。 H4、HepG2およびHeLa細胞を用いてラットPEPCK遺伝子のプロモーターをCATあるいはluciferaseの上流に連結した発現ベクターを導入し、デキサメサゾン(Dex)による転写活性をreporter assayにより調べた。またCOUP-TFIとDNAあるいは他の蛋白との相互作用を検討するためにそれぞれ酵母のGa14蛋白システム,yeast 2 hybrid assayを用いた。その結果,COUP-TFIはPEPCK遺伝子プロモーター上では他の転写因子と共にDexによりaccessory factorとして作用するが、脂質代謝関連酵素のプロモーターを用いると、単独で転写促進し、さらに他の転写因子に対しDNA非依存性に介在因子として作用することも明らかとなった。すなわちCOUP-TFIがステロイド受容体による転写調節に必要な介在因子であるGRIP1やSRC-1と物理的および機能的な相互作用を持ち,さらにこれら相互作用にCOUP-TF-IのC-terminal領域が重要な役割を果たすことが明らかとなった.これらの結果はCOUP-TF1が組織発生に重要な因子であるだけでなく、転写抑制のみならず誘導因子としても作用し、その誘導には少なくとも3つの機序が存在し、種々の組織において糖・脂質代謝などの調節に関与するものと考えられる。
|