研究概要 |
鎖状のα-アミノ酸の還元で容易に得られる光学活性アミノアルコールからβ-アミノホスフィン等を合成し、これらを光学活性な鍵化合物として種々の新規なP-N型、S-N型、およびP-P型配位子を開発した。すなわち、P-N(or P-S)型配位子としてはアミジノ基とホスフィノ基またはスルフィド基をもつVALAPおよびその類縁体、アミジノ基の代わりにイミノ基をもつ類縁体、さらにP-P型配位子としてはジアシル基をスペーサーとしてもつジアミド構造で遷移金属と大環状錯体構造をとれる新規なタイプの配位子を合成した。これらの配位子を用いて、鎖状および環状アリルエステルを基質としマロン酸エステルのカルボアニオンやケテンシリルアセタールを求核種とするパラゾウム触媒不斉アリル化について検討した。その結果、P-N型配位子では鎖状型アリルエステル(1,3-diphenylpropen-2-yl pivalate)において非常に高いエナンチオ選択性(〜95%ee)で反応が進行することがわかった。一方、P-P型配位子(フタロイル基をスペーサーとしてもつもの)が、これまで困難であった環状アリルエステル(cyclohexen-2-yl pivalate)のアリル位アルキル化において非常に高いエナンチオ選択性(99%ee以上)を示すことが明らかとなった。また、P-N型配位子で、N側に各種p-置換ベンジリデンイミノ基をもつ類縁体において、電子吸引基が触媒活性と選択性を低下させるのに対し、電子供与基(-NMe_2基)がその両方を大きく高める効果があることを見いだした。さらに、P-P型配位子のRh錯体触媒を用いるケトンのヒドロシリル化において、ジアシル基スペーサーの種類がエナンチオ選択性にかなりの影響を与えることも明らかにした。
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