本研究の目的は、がん化学療法患者の安寧(well-being)に及ぼすリラクセーション技法の長期的影響と技法習得の期間及びそのプロセスを明らかにすることであった。2種類のリラクセーション技法、漸進的筋弛緩法Progressive muscle relaxation(PMR)と誘導イメージ法Guided imagery(GI)、を選択し、それぞれ異なる施設に入院中のがん化学療法患者20名ずつを対象に行った。状態不安を変数とし、1グループに対するプレテスト・ポストテストデザインを用いた。化学療法が決定し対象者から研究参加への承諾が得られた場合、STAI(Spierberger State-Traite Anxiety Inventory)を用いて不安度を測定した後(プレテメト)、PMRまたはGIを指導した。テープを用いて一日2回の練習をすすめ、化学療法日にポストテストを行った。GIを用いた研究では、一週間後に2回目のポストテストを行った PMRを用いた研究は、Kがんセンターにおいて入院患者20名を対象に行った。平均年齢は57.3歳、男女10名ずつ、肺がん7名、婦人科がん6名、頭頚部がん5名等であった。状態不安得点は、プレテストよりもポストテストにおいて有意に低下していた(<0.05)。GIを用いた研究は、F大学附属病院において乳がん患者のみを対象に行った。平均年齢は47.7歳、全て女性の乳がん患者であった。状態不安得点は、プレテストよりも2回目のポストテスト、ポストテスト1回目よりも2回目において有意に低下していた(<0.05)。 PMRの習得期間は「4日目」までに10名、GIの習得期間は「5日目」までに4名であった。2技法とも習得のプロセスは、個人差が大きかった。2年後、GI体験者18名を対象に質問紙調査をした結果、返却した8名中5名は、生活の中でリラクセーション技法を適用していた。これらの結果から、リラクセーション技法はがん化学療法患者のwell-beingを維持する上で長期にわたり、重要な役割を果たしていることが示唆された。
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