研究概要 |
平成11年度(初年度)は,福岡に立地する戸建注文住宅の居住者を対象とした「畳空間の住み方とその意識に関する調査」の結果のデータ整理と分析を行い,地方大都市の福岡における以下のような,居住者の畳空間にかかわる住み方と住意識の動向が明らかになった. 住宅平面の中に1室のみ残された畳室に着目すると,その半数は客間ないし予備室として存在するが,実際の接客には畳室よりLやLDのほうがよく使われ,また,宿泊客のない世帯が2割弱存在し,客間としての存在意義が薄らいできている.さらに,改まった客はあまり存在せず,また,法事や結納,正月,節句,クリスマスなどの行事や集まりごとにも畳室を使用することは減少している.以上のように行事・接客空間としての生活機能面から考察すると,畳空間の存在意義は薄らいでいることが明らかになった. 意識面では,若年層ほど畳の必要性や愛着意識の薄らぎは否めないが,心がやすらぐ,落ちつくなど,心理的,精神的なものを畳空間に求める意識が強く存在することがわかった.また,畳室のインテリア計画に対しては,伝統的なものばかりでなく,新しいデザインや素材を用いた畳空間に対する志向性が認められた. さらに本年度は,首都圏等における住宅の居住者に対する同種の調査を実施し,データの整理,分析を行っている.
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