本年度の研究は、2段階に分けられる。第1段階は、教育的意図のもとに行われるネイティブスピーカーとノンネイティブスピーカーのインターアクションの特質の記述であり、第2段階は、同様のインターアクションにおけるインターアクションの質の変化を記述することである。まず、第1段階の研究として、教師と学習者の間で行われる話すことを中心とした個人指導の授業であるチュートリアル・セッションを題材として研究が行われた。ベテラン教師と学習者の間で行われた12のチュートリアル・セッションが録音され、その特徴の概要が観察された。その上で、チュートリアル・セッションの特質がもっとも顕著に表れていると判断される1つのセッションを選び、詳細に分析した。そうした、分析の結果をまとめたものが、「発達の最近接領域としてのチュートリアル・セッション」(『多文化社会と留学生交流』第5号)である。第2段階として、1人の学習者をインフォーマントとして、1セット2回ラ5セット、計10回のチュートリアル・セッションが実施され、その様子を録音・録画した。この資料は、同日に行われた2回のチュートリアル・セッション(同じ話題で担当者が異なる)の間でのインターアクションの質の違い、及び5セットの間のインターアクションの質の違いという2つの観点から分析される。本年度末から来年度当初にかけて、分析し論文にまとまる予定である。理論的な側面の検討も並行して行っている。
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