先年度中に収集したチュートリアルセッション(教師と学習者の間で行われる話すことを中心とした個人指導の授業、1セット2回×5セット、2回のチュートリアルセッションは同じ話題で異なる担当者によって行われる)のデータの分析を引き続き行っている。分析の観点は、対になっているチュートリアルセッション間の相互行為の質的な違い、及び5セットの間の相互行為の質の変容である。また、対比するための資料を得るという必要から、日本語教室の授業のデータ(日本語教育経験20年のベテラン教師、基礎日本語教育段階の授業1コマ、90分)も採集し、現在、その構造および相互行為の特質を分析するための準備を行っている。一方、母語話者と非母語話者の相互行為を分析するにあたっての理論の考究がなお必要であると考え、必要な文献を蒐集・繙読し、第二言語発達の視点を踏まえながら人間の言語とコミュニケーションを考える論考を著した。「ヴィゴツキーの精神への社会文化的アプローチ」(『多文化社会と留学生交流』)、「言語とコミュニケーションを再考する」(『人間主義的日本語教育』)などである。来年度はこれまでのデータの分析と考察をさらに進め、また理論的な考究に一定の結論を出して、報告書を作成する予定である。
|