1.胞子発芽過程におけるサイクリン依存性キナーゼの動態 分裂酵母のBタイプサイクリンであるCdc13とCig2について、それぞれエピトープタグをつけた遺伝子を染色体に組みこんだ菌株を準備した。胞子を同調的に発芽させウエスタンブロットにより、これらのサイクリンタンパク質の存在量を調べた。その結果、未発芽胞子にはほとんど存在しないこと、最初のS期に先だって急激に蓄積することを見出した。Cdc2キナーゼの活性調節にサイクリンの合成が重要であることが示唆された。一方、サイクリン依存性キナーゼインヒビターであるRum1タンパク質は胞子に存在し、S期には消失することが明らかとなった。 2.胞子の極性成長とアクチンパッチの局在 胞子発芽に伴うアクチンパッチの局在を詳細に検討した。その結果、発芽後の非極性的な成長期のかなり初期に、細胞の一端にアクチンパッチが局在し始めることを見出した。胞子のDNA染色の際、胞子壁がDAPIに親和性をもち強く染色されることを見出した。アクチンパッチが局在する細胞端で、細胞表層のDAPI染色性が局所的に失われることを見出した。極性成長の開始が胞子壁の分解を伴うことが示唆された。条件致死突然変異株をスクリーニングし、極性成長の開始が著しく遅延する温度感受性突然変異株を数株単離した。 3.胞子発芽過程での胞子壁局在性23kDaタンパク質の消長 胞子壁局在の23kDaタンパク質について、発芽過程での変動をSDS/PAGEにより検討した。その結果、発芽開始とともに急速に消失していくことを見出した。このタンパク質の本体について調べるため、電気泳動により単一バンドにしたタンパク質をトリプシン分解後マススペクトロメトリーにかけ、ペプチドフィンガープリント法により同定を試みた。
|