先住民による海洋資源利用と管理:漁業権と管理をめぐる人類学的研究

1999 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 11691053
• 研究種目: 基盤研究(A)
• 応募区分: 一般
• 研究機関: 国立民族学博物館
• 研究代表者: 岸上 伸啓 国立民族学博物館, 先端民族学研究部, 助教授 (60214772)
• 研究分担者: 大島 稔 小樽商科大学, 言語センター, 教授 (00142787) ; 松本 博之 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (70116979) ; 秋道 智彌 国立民族学博物館, 民族社会研究部, 教授 (60113429) ; 竹川 大介 北九州大学, 文学部, 助教授 (10285455) ; 岩崎 まさみ 北海学園大学, 人文学部, 助教授 (50305893)
• キーワード: 先住民 / 海洋資源 / 資源管理 / 資源利用 / 環太平洋 / 極北地域 / 資源論 / 環境

研究概要

平成11年度には6名の調査者をカナダの東部極北地域(岸上)、カナダの北西海岸地域と西部極北地域(岩崎)、ロシアのカムチャツカ半島(大島)、オーストラリアのトレス海峡地域(松本)、ソロモン諸島のマライタ島(竹川)、インドネシア(秋道)へ派遣し、各地域における海洋資源の利用と管理についての調査を実施した。岸上、岩崎、竹川はイルカ類や鯨類を、大島はサケを、松本はジュゴンを、秋道はウミガメを中心に現地調査を実施した。また、岸上はオタワ、ワシントンにおいて米加両国の資源にかかわる先住民政策に関する調査を実施するとともに、資源についての文献目録のデータベース化を開始した。本年度の調査により、次のことが判明した。(1)調査地においてはサケやクジラ、イルカ、ジュゴン、ウミガメなどの海洋資源は先住民の社会や文化を維持する上で、現在でも重要な資源である。(2)カナダやオーストラリアでは、クジラ、シロイルカ、ジュゴンの総個体数を維持するための資源管理の規制が実施されているが、ロシアなどでは資源管理はあまり有効には機能していない。(3)同一の資源が生業や商業や様々な目的で重層的に利用されている場合には、先住民とそれ以外の人々や団体との間に葛藤が生じている。(4)北米の極北地域などではPCB、DDT、水銀などによる環境汚染が進んでおり、資源の管理としていかに資源の安全性を保つかという問題が重要となってきている。

研究成果

• [文献書誌] 岸上伸啓: "先住民資源論序説:資源をめぐる人類学的研究の可能性について"人文論究. 68号. 63-80 (1999)
• [文献書誌] 秋道智彌: "生態人類学から見たマングローブにおける所有権"未来開拓国際ワークショップ報告書(京大生態学研究センター). 7-10 (1999)
• [文献書誌] Iwasaki, M and M. Nomoto: "The Ainu on Whales and Whaling"W.W. Fitzhugh, ed. Ainu: Spirit of a Northern People. Washington, D.C. : Arctic Studies Center, Smithonian Institution. 222-226 (1999)
• [文献書誌] 大島稔: "Elements of Ainu culture found in those of indigenous peoples in Kamchatka"The Proceedings of the 14^<th> International Abasiri Sympousium, Association for the Promotion of Northern Culture. (印刷中). (2000)
• [文献書誌] 松本博之: "トレス海峡諸島の地域社会"熊谷圭知他編「ローカルからグローバルへ」古今書院. (印刷中). (2000)
• [文献書誌] 松本博之: "風と身体-トレス海峡諸島の「ひと」と「自然-」"地理学報. 34号(印刷中). (2000)
• [文献書誌] 秋道智彌: "なわばりの文化史:海・山・川の資源と民俗社会"小学館. 270 (1999)
• [文献書誌] G.W. Wenzel, G.Hovelsrud-Broda and N. Kishigami 編著: "The Social Economy of Sharing : Resource Allocation and Modern Hunter-Gatherers"国立民族学博物館 Senri Ethnlogical Studies.No.53 (印刷中). (2000)