研究概要 |
東南アジア諸国では,急速な都市化,工業化により環境問題が深刻化している.そこで,タイおよびマレーシアの河川を対象として,変異源性物質の定量ならびに微生物学的環境評価を行った.なお,環境調査を行う地点として,生活排水等の影響を受けるタイ・チャオプラヤ川の3地点,マレーシア・ケラン川の5地点を決定した. 1.各地点における最近の現存量ならびにエステラーゼ活性を測定した結果,マレーシアの河川水中には培養可能な細菌が多いことがわかり,これは有機物質による汚染の進行を微生物学的に示すものであった.また,大阪の河川水を試料として検討した蛍光染色条件では,熱帯河川の細菌のエステラーゼ活性を過小評価する傾向が見られ,蛍光活性染色法を熱帯地域に生息する細菌に適用するにあたってはその改良の必要であることがわかった. 2.蛍光 in situハイブリダイゼーション法を用いて,各地点の細菌群集構造をシングルセルレベルで解析したところ,Proteobacteria gamma-subclassの細菌が優占種であった.大阪の試料ではbeta-subclassの細菌が優占種であったことから,熱帯の河川と冷温帯の河川の細菌群集構造は大きく異なることがわかった. 3.河川水中の変異源性物質の定量を試みたところ,従来の方法では夾雑物の影響により定量が難しく,カラム等を用いた試料の前処理が必要であることがわかった.
|