研究課題
基盤研究(B)
研究初年度とはいえ、すでに築かれたネットワークから、かなり有意義な活動を行うことができた。まず、四川方面では細井が5月と9月に現地に赴き、当地の端公杜南楼氏にかなり詳細なききとり調査を行った。これにより早稲田大学演劇博物館所蔵の仮面・木偶に網羅的な考証をつけ、更に深い背景を添えて十一月の演劇博物館展示によって公開するとともに、2000年3月の演劇博物館紀要『演劇研究』に成果を公表する。貴州側協力者のお力添えにより、8月には黔北の〓潭で儺戯の実演を見学した後2日間の座談会を行った。法師達本人から現在の活動状況を聞き出すことができた他、地元の儺戯研究会の研究者とも研究交流を行うことができた。貴州側協力者はこのほか黔北の道真県文化局との交渉を進め、協力して調査する基盤を作るとともに、当地の法師のもっていた大量の木版を用いて印刷を行い、貴重な資料を収集した。十一月にはそれらも含めて演劇博物館で広く公開にいたり、それを縁に文学部森由利亜助教授ら民間文書解読のノウハウをもつ研究者へのネットワークが広がりつつある。また、民俗文化管理行政に携わる人々との交流ともなり、文化資源・観光資源として注目されつつある「民俗」の現状については、橋本が独自の視点で分析を進めている。十一月には貴州側協力者陳玉平講師他を招き、実演を伴いつつ研究会を開いた。多方面の方々から貴重な意見をいただくとともに、新たにパフォーマンス芸術の立場からフランス演劇を専攻される伊藤洋教育学部教授に研究メンバーに参加いただくこととなった。メンバーで愛知県の民俗芸能「花祭」を調査した際には地元花祭会館館長伊藤勝文氏と研究交流の輪が広がり、日中の儀礼パフォーマンス研究に新たな展開が予想される。こうしたネットワークと、本年度収集した多くのパフォーマンスデータを用い、来年度は各々の担当領域について研究成果のまとめに入りたい。