研究課題
西南儺戯という視点、これはそもそも1991年に早稲田大学演劇博物館にその複製一式を収蔵した四川省端公戯仮面143点、木偶38点の考証から始まった。この資料と周辺地区の儀礼にみられる演劇的要素の比較を軸に進めてきた課題であったが、昨年11月の演劇博物館企画展示により各担当者間に実物を見ながらの研究討論が実現したほか、研究チームの他に内外の研究者のアドバイスを得ることができたことで、本年度の成果のまとめにむけた参加各人の活動は大きく前進した。四川省を担当する細井は、既に成果報告として2000年3月の演劇博物館紀要『演劇研究』第二十三に「儀式と芸能_中国四川省杜家端公班の「端公戯」」としてまとめ、本研究による現地調査も三回目を数える。貴州については、研究分担者に稲葉を加え、貴州側協力者の努力のもと発見された黔北地区道真県の法師の木版考証の縁から、本学文学部助教授森由利亜氏も同行する同地の調査を計画した。道真県は現在外国人の立ち入りのできる開放区として登録申請中のため、本年の調査は実現しなかったものの、メイ潭県の他新たに遵義県を調査、特色ある演目から、従来の民間宗教としての視点のほかに、少数民族雑居地区としての西南儺戯のパフォーマンスについて注目するようになる。本年は、二年という限定した研究計画のもと一定した成果を形にするべき最終年度にあたる。現在各分担者は各々担当各地区についての着眼点をまとめ、早期の研究成果報告書作成にむけて執筆中である。そして、伊藤は演劇博物館に集まる演劇研究者を集め、国境を超えた演劇資料データの分析方法を追究する課題を、細井は少数民族雑居と演劇・儀礼の関係、稲畑は考古学的視点を含めた現代民俗芸能との関係をテーマとする課題をそれぞれ申請し、次なるステップにむけて動き始めている。
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