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2000 年度 実績報告書

フリーラジカルによる細胞傷害に対する防御機構の研究

研究課題

研究課題/領域番号 11694290
研究機関九州大学

研究代表者

中別府 雄作  九州大学, 生体防御医学研究所, 教授 (30180350)

研究分担者 冨永 洋平  九州大学, 生体防御医学研究所, 助手 (90304823)
作見 邦彦  九州大学, 生体防御医学研究所, 助手 (50211933)
古市 正人  九州大学, 生体防御医学研究所, 助手 (70199420)
續 輝久  九州大学, 大学院・医学研究院, 教授 (40155429)
キーワード活性酸素 / 8-オキソグアニン / 2-ハイドロキシアデニン / ミトコンドリア / 発がん / 自然突然変異
研究概要

酸素呼吸に依存して生命を維持している好気性生物では,酸素呼吸や酸化還元反応で必然的に生じる活性酸素などのフリーラジカルによる細胞傷害は不可避である.本研究では,このような細胞障害に対する生体防御に関わる遺伝子とその遺伝子産物について,その機能と構造を分子レベルで明らかにし,さらに細胞・個体レベルでの生理機能を解明することを目的として,九州大学・續博士,フランス国立科学研究センター・Takahashi博士,同・Boiteux博士,米国国立がん研究所・Kasprzak博士,米国ジョンスホプキンス大学・Ichikawa博士の研究グループとの共同研究を進めて,以下の成果を挙げた.
(1)MTH1蛋白質の機能の解析
MTH1蛋白質の基質としてリボヌクレオチドの酸化体(2-OH-ATP,8-oxo-ATP,8-oxo-GTP)に対する作用を検討し,MTH1蛋白質は2-OH-ATPを最も効率良く分解することを明らかにした.これまでの結果とあわせて考えると,MTH1は2-OH-dATP=2-OH-ATP>8-oxo-dGTP=8-oxo-dATP>8-oxo-GTP=8-oxo-ATPの順に効率良く分解することが明らかになった.
(2)MTHI遺伝子の個体レベルでの発現制御
ラットの個体レベルでのMTH1の発現を免疫染色法により解析し,MTH1が肝臓,腎臓,精巣で高レベルで発現していること,さらに個々の細胞によってMTH1の細胞質と核の存在比が大きく変動することを明らかにした.
(3)MTH1遺伝子欠損による自然発がんの上昇
通常のSPF飼育条件下で1年半を経過した時点のマウス個体(野生型:♂46,♀4;MTH1-/-:♂42,♀51)で観察された自然発生腫瘍について病理および統計解析を行った.その結果,野生型の雄では肺,肝臓,胃に腫瘍(アデノーマおよびアデノカルシノーマ)を発生したケースが11例観察されたが,MTH1遺伝子欠損マウスの雄では29例に上昇していた.一方,野生型の雌では1例のみに肺の腫瘍を認め,MTH1遺伝子欠損マウスの雌では12例に肺,肝臓,胃に腫瘍(アデノーマおよびアデノカルシノーマ)を認めた.
以上の結果から,マウスにおいてはMTH1遺伝子欠損により雌雄ともに有為に腫瘍の自然発生が増加することが明らかになった(p<0.001).すなわち,MTH1蛋白質は酸化プリンヌクレオシド三リン酸を一リン酸へ分解することにより,リーラジカルによる細胞傷害の1つである自然突然変異ひいては発がんの抑制に寄与していると結論できる.

  • 研究成果

    (6件)

すべて その他

すべて 文献書誌 (6件)

  • [文献書誌] Ohyagi,Y.,Yamada,T.,Nishioka,K.,Clarke,N.J.,Tomlinson,A.J.,Naylor,S.,Nakabeppu,Y.,Kira,J.,and Younkin S.G.: "Selective increase in cellular Aβ42 is related to apoptosis but not necrosis."Neuro report. 11・1. 167-171 (2000)

  • [文献書誌] Miyako,K.,Takamatsu,C.,Umeda,S.,Tajiri,T.,Furuichi,M.,Nakabeppu,Y.,Sekiguchi,M.,Hamasaki,N.,Takeshige,K.,and Kang,D: "Accumulation of Adenine DNA Glycosylase-sensitive Sites in Human Mitochondrial DNA."J.Biol.Chem.. 275・16. 12326-12330 (2000)

  • [文献書誌] Takama,F.,Kanuma,T.,Wang,D.,Nishida,JI,Nakabeppu,Y.,Wake,N.,Mizunuma,H.: "Mutation analysis of the hMTH1 gene in sporadic human ovarian cancer."Int.J.Oncol.. 17・3. 467-471 (2000)

  • [文献書誌] Shimokawa,H.,Fujii,Y.,Furuichi,M.,Sekiguchi,M.,and Nakabeppu,Y.: "Functional significance of conserved residues in the phosphohydrolase module of E.coli MutT protein."Nucleic Acid Res.. 28・17. 3240-3249 (2000)

  • [文献書誌] Fujikawa,K.,Kamiya,H.,Yakushiji,H.,Nakabeppu,Y.,and Kasai,H.: "The human MTH1 protein hydrolyzes the oxidized ribonucleotide,2-hydroxy-ATP."Nucleic Acids Res.. 29・2. 449-454 (2001)

  • [文献書誌] Liang,R.,Igarashi,H.,Tsuzuki,T.,Nakabeppu,Y.,Sekiguchi,M.,Kasprzak,K.S.,and Shiao,Y-H: "Presence of potential nickel-responsive element (s) in the mouse MTH1 promoter."Annals of Clinical & Laboratory Science. 31・1. 91-98. (2001)

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公開日: 2002-04-03   更新日: 2016-04-21  

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