ケタス(イブジラスト)は、臨床的にも盛んに用いられている脳循環改善薬である。しかしながら、その細胞内作用機序は明らかでない。筆者は、以前、アメフラシ神経節細胞を用いた電気生理学的な実験により、ケタスは受容体刺激によってGo型G蛋白を介する伝達系を抑制し、その作用部位はGoの下流にあること、一方、Gs型G蛋白の伝達系には作用しないことを明らかにした。今回、ケタスの作用部位についてさらに検討し、以下の結果を得た。 1.ドーパミン受容体を刺激したときGoが活性化して発生するK^+電流応答は、ケタスによって著しく抑制された。 2.プロテインキナーゼC活性化剤(PDBu)、チロシンキナーゼ阻害剤(ST-638)、あるいはMAPキナーゼキナーゼ阻害剤(PD98059)は、ケタスと同様にドーパミン応答を抑制した。 3.しかしながら、PDBu、ST638、PD98059はいずれも、ドーパミン応答に対するケタスの効果を抑えなかった。 4.これらのことから、ケタスの作用部位は、プロテインキナーゼC、チロシンキナーゼ、MAPキナーゼカスケードのいずれでもないことが示唆された。
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