平成11年度は、前回平成9・10年度の調査で着手できなかった長野県(長野、松代、松本など)を中心とする地域の武芸関係史料の調査、史料撮影、収集、閲覧、検索などから作業を始めた。特に、前回調査で貴重な武芸の史料が確認された松代藩真田家の文書類(前回調査において一部収集済)は、本研究を進める上で大変貴重であり、且つ、その量も多いため、この収集、分析作業の未完了部分の作業は丁寧に行った。また、これに併せて、松代藩真田家に関する史料は国文学資料館史料館にも真田家文書として一部所蔵されていることが明らかとなっているため、これら2ヵ所の武芸関係史料の調査、検索、閲覧などを重点的に行った。国文学資料館史料館には、松平定信の次男真田幸貫によって草案された文武学校の日記や武芸掛日記など当時の武芸実践の記録が所蔵されており、行われていた武芸の種類、階層、担当者、頻度などが記された近世後期の武芸の展開が明らかになる好史料が確認された(巻頭、巻末で虫食いなど痛みのひどい部分もあり、撮影方法、解読不明部分の分析処理については検討中)。 本研究に深い関わりのある松平定信(白河藩)、松平定永(桑名藩)、真田幸貫(松代藩)などの史料のうち、収集済の史料については、現像、プリント、CH焼付や分類、整理、解読など可能な部分から順次作業を行っているところである。そして、今年度の研究成果の一部は、「『白川侯傳心録』に関する一考察」日本武道学会第32回大会(平成11年9月9日:於早稲田大学)、「甲乙流の成立とその展開に関する一考察」東海武道学会第29回大会(平成11年12月18日:於中京大学)などの中で発表した。
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