研究概要 |
本研究は,アジアの「恐竜の道」を用いて,過去の自然環境を考察するための体験学習の場づくりを究極的な目標として実施している. 本年度の研究では, (1)中国・モンゴルでの野外調査 モンゴルと日本を結ぶ「恐竜の道」の経路が予想される中国東北部,華北,華中,モンゴルの恐竜の足跡や体化石の産地で,産出層の時代設定を行い,恐竜の恐竜の種類別組成,生息環境を調査した. モンゴルのゴビ砂漠北東部のチョイル地域は,群馬県中里村とともに白亜紀前期のornithomimid恐竜が産出する世界で2つの地域の1つである.ここは,1億年ほど前の山間盆地で,湖とそこに流れ込む河川の環境が復元される.多種の恐竜,ワニ類,カメ類,魚類などの脊椎動物化石,軟体動物化石,昆虫化石,貝形虫化石や植物化石が現地性の産状をもって産出する.そのため,種数と個体数の頻度別分布を基に,この地域の生態系の復元できた.魚類やカメ類が個体数が多く,肉食恐竜が個体数頻度が少ないので,魚類やカメ類を底辺に,肉食恐竜を頂点とする生態系のピラミッドが復元できた. 中国遼寧省の阜新の白亜紀前期の地層から鳥脚類の足跡を多数発見した.これは,韓国の鎮東層産の鳥脚類と類似する.足跡の長さに基づくサイズ頻度分布を作成し,比較すると,阜新の鳥脚類は一山型の分布を示す一世代が,韓国のそれは2山以上の分布を示す複数世代が解釈できる.これは,鳥脚類の集団が,中国と韓国の間を行き来したことを示す可能性があると解釈できる. (2)日本の「恐竜の道」での自然観察路の検討 「恐竜の道」の東の終着点に当たる日本国内の中里村と手取地域の恐竜産地を中心とする自然観察路を提案のための基礎調査を行ない,地質と化石から白亜紀前期の環境を復元した. (3)タイの恐竜足跡相の調査 日本から産する恐竜の仲間がタイからも産出するので,比較のためにタイ産の恐竜足跡を調査した.
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