研究概要 |
本研究は,アジアの「恐竜の道」を用いて,過去の自然環境を考察するための体験学習の場づくりを究極的な目標として実施している. 本年度の研究では, (1)中国,タイ,ラオスでの野外調査 中国の華南,華中の恐竜の足跡化石の産地で,産出層の時代設定を行い,恐竜の種類別組成,生息環境を調査した.これにより,東アジアの恐竜の足跡化石の産地の90%をカバーした.三畳紀から白亜紀後期の期間の東アジアと東南アジアの恐竜足跡相を理解できた.各時代を通して,低緯度地域では大型の恐竜が卓越し,高緯度地域では小型の恐竜が卓越する.三畳紀からジュラ紀前期の足跡の組成は,北米や西欧のそれと類似する.しかし,ジュラ紀後期から白亜紀のものは類似せず,東アジアと東南アジアで恐竜は独自の進化をしたことを示すと思われる.恐竜の足跡は,三畳紀とジュラ紀前期の陸成層の対比に有効な化石であることがわかった.さらに,北米から西欧を経て東アジアへ続く三畳紀からジュラ紀前期の「恐竜の道」の復元が可能であることもわかった. (2)モンゴルの生態系の復元 モンゴルの白亜紀前期の湖-河川系の堆積盆地周辺の生態系に関して,食物連鎖構造を復元し,エネルギー循環により,存在した陸生脊椎動物の個体数を推定した. (3)東アジアの前期白亜紀堆積盆地の埋積様式と古地理 恐竜の生息環境を推定するために,古地理の復元を行った.ゴビ砂漠のChoir,中国東部の鶏西,延吉,韓国の慶尚,日本の手取の各盆地は,それぞれ大陸内部に発達した湖-河川系の盆地である.それぞれの盆地は独立しており,大きな河川により結ばれていたと推定される.恐竜は,れらの河川を通して交流が行われていたと思われる. (3)群馬県中里村での研究の還元 中里村で,このプロジェクトの研究成果発表会を開催し,自然探索路を立案し,村内の児童・生徒への恐竜教室と自然探索会,高齢者へ講演会を実施した.
|