研究概要 |
コムギは世界でもっとも多くの人々が利用する穀物の一つである。考古学的研究から、栽培コムギは約1万年前にメソポタミアで人類によって栽培化された結果起原したと考えられている。本研究の目的は、これら栽培コムギの起原を現存する栽培種や野生種の核DNAの構造変異を手がかりに解明することである。本年度は以下の3点について研究を行った。 1.植物材料の育成と全DNAの抽出。野生二粒系コムギ(T.dicoccoides)60系統(皮性)、栽培二粒系コムギ(T.dicoccum)180系統(皮性)、T.paleocolchicum3系統(皮性)、T.ispahanicum10系統(皮性)、T.durumやT.turgidumなどの二粒系コムギ約40系統(裸性)、普通系コムギ(T.aestivum,T.compactum,T.macha,T.spelta,T.sphaelococcum)80系統、またコントロールとして一粒系コムギとタルホコムギ各1系統の全てから高純度のDNAを抽出した。これらの系統については形態の観察や稔性調査も行った。 2.ゲノムサイズが非常に大きいコムギを対象としたAFLP解析系のたち上げを行った。様々な方法を検討した結果、PCRの段階で合計8個の選択的塩基を使用し、銀染色法によって解析する方法を確立した。 3.システムのテストを兼ねて、上記の普通系コムギ80系統について2組のプライマーによる解析を行った。その結果、形態的に原始的なT.machaとT.speltaがもっとも大きな多様性を示し、興味深いことにコーカサス地方の固有種とされるT.machaが普通系コムギの中で最も初期に起源した可能性が示唆された。 12年度は、以上のシステムにより大規模かつ組織的にフィンガープリンティングを進める予定である。
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