今期は、雑音が歪分布測定に及ぼす影響を計算機シミュレーションによって見積もるとともに、実験系の立ち上げを図った。 シミュレーションの結果、歪分布の測定に必要な信号対雑音比は30dBであることがわかった。コヒーレントOTDRで実現可能な信号対雑音比は、距離分解能1mで50dB、10cmで30dBであることから、理論的には、分解能/歪感度として1m/10^<-7>〜10cm/10^<-6>が可能であることが明らかとなった。 測定原理を確認するために、コヒーレントOTDRの実験系を構成し、測定を開始した。光源としてはシアン化水素ガス吸収線を利用した周波数安定化光源を使用し、光源から出た連続光を二分岐して、一方を信号光、他方を局発光とした。信号光をAO変調器を使用してパルス化し、非測定ファイバに入射した。非測定ファイバから戻るレイリー散乱光を前述の局発光と混合してヘテロダイン検波し、平均化処理した。パルス幅を50ns(距離分解能5mに対応)、100ns(同10m)、200ns(同20m)、500ns(同50m)と変えて実験を行った結果、100ns以上のパルス幅でレイリー散乱光が観測されたが、50nsでは雑音に埋もれて観測できなかった。また、観測されたレイリー散乱波形は再現性が悪く、歪測定の原理確認には至らなかった。 来期は、測定系内の反射抑圧、EO変調器、光ファイバ増幅器、恒温器の導入等の方策を講じて、信号対雑音比、距離分解能、再現性等の向上を達成し、測定原理の確認を図る予定である。
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