提案している歪分布測定技術を実現するためには、周囲温度および歪分布が安定して変わらない状態にある光ファイバにコヒーレントな光パルスを入射したとき、レーリー散乱波形が再現性よく観測されなければいけない。しかし、昨年度(平成11年度)行った実験では、レーリー散乱波形は観測する度に変化し、再現性は全く期待できない状況であった。この原因としては、被測定ファイバを室内放置の状態で実験を行ったためにファイバの状態が不安定であったことと、光パルス幅(50nsで実験)が広過ぎるために微小な環境変化の影響でレーリー散乱波形が変化してしまう状況にあったことが考えられた。 このため、今年度はこれらの実験条件を改善することとし、被測定ファイバの状態を安定させるために、ファイバを恒温器に封入した。また、光パルス幅を狭くするために、周波数安定化光源から得られる連続光をAO変調器とEO変調器の2段構成でパルス化した。これにより、パルス幅5ns、消光比100dBのコヒーレントパルスを実現した。なお、パルス幅5nsは測定距離分解能50cmに対応する。パルス幅を狭くしたことにより、レーリー散乱波形が微弱になりSN比が劣化するが、これを防ぐために、光ファイバ増幅器を使用して光パルスを増幅した。 上記施策を講じて実験を行った結果、5分程度以内の時間間隔で測定したレーリー散乱波形については、再現性が確認できるようになった。レーリー散乱波形の再現性についてはこれまで報告例がないので、今回得られた結果は、世界でも初めての実験データと思われる。 来期は、レーリー散乱波形の再現性の更なる向上を進め、歪分布測定原理の確認を図る予定である。
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