内分泌攪乱物質の環境リスク

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 12055101
• 研究機関: 京都大学
• 研究代表者: 松井 三郎 京都大学, 地球環境学堂, 教授 (90092808)
• 研究分担者: 井口 泰泉 岡崎国立共同研究機構, 統合バイオサイエンスセンター, 教授 (90128588) ; 田辺 信介 愛媛大学, 沿岸環境科学研究センター, 教授 (60116952) ; 森 千里 千葉大学, 医学部, 教授 (90174375) ; 森澤 眞輔 京都大学, 工学研究科, 教授 (50026340) ; 有薗 幸司 熊本県立大学, 環境共生学部, 教授 (70128148)
• キーワード: 内分泌撹乱物質 / 環境リスク / 毒性メカニズム / 人体汚染 / 野生生物汚染 / 代謝機構 / バイオアッセイ・バイオマーカー

研究概要

本研究領域は内分泌撹乱物質の環境リスクを明らかにすることを目的として、内分泌撹乱物質の人体汚染、野生生物汚染、毒性メカニズム、代謝機構、汚染評価法、リスク管理に関する研究を行った。
人体影響では、PCB、ヘキサクロロベンゼン、ヘキサクロロシクロヘキサン、DDT、DDE、植物エストロジェンなどが胎盤を経て母体から胎児に移行していること、母乳が汚染されていることなどがわかった。また、精巣重量のピーク時重量の低下傾向、IQの低下などの現象が化学物質暴露と関連していることを示唆した。また、ニホンザルを用いた実験動物系を作成した。
野生生物への汚染影響の研究では、二枚貝のイガイ、カツオ、アホウドリおよび海棲哺乳動物を対象に生物蓄積性内分泌撹乱物質や重金属類による地球規模の汚染実態を調査した。また、野生生物では現状の内分泌撹乱物質の汚染レベルで免疫毒性や生殖毒性が起こりうることを示唆した。また、環境汚染物質暴露を検出する鳥類やアカネズミのバイオマーカーを開発した。
毒性メカニズムでは周生期マウスへの内分泌撹乱物質暴露による、膣上皮の異常増殖と角質化のメカニズムについて知見を得た。また様々な女性ホルモン様物質による、遺伝子発現の変化に与える影響をマイクロアレイを用いて解析をすすめ、その作用機構の解明を進めた。
代謝機構の研究では、ビスフェノールAがラット肝S9により代謝活性化され、極めて強いエストロゲン活性を示す物質、4-Methyl-2,4-bis(p-hydroxyphenyl)pent-1-one(MBP)になることを突き止めた。
汚染評価方法では、マイクロアレイを用いるバイオアッセイや、in vivo生体NMRイメージング法、魚類の様々なビテロジェニン測定法などを開発した。
リスク管理では内分泌撹乱物質の環境中における毒性寄与と挙動や、汚染物質の処理方法の研究を行った。また、ビスフェノールA経口摂取における体内動態の実験を行い、マウスPBPKモデルを構築した。

研究成果

• [文献書誌] Y.Shimizu, S.Matsui et al.: "Evaluation of microorganic pollution in lake sediments : Application to Akanoi Bay"Environ Technol. 24(7). 889-896 (2003)
• [文献書誌] M.Yasui, S.Matsui, T.Matsuda et al.: "Mutagenic events induced by 4-hydroxyequilin in supF shuttle vector plasmid propagated in human cells"Carcinogenesis. 24(5). 911-917 (2003)
• [文献書誌] Mori C, Komiyama M, Adachi T et al.: "Application of toxicogenomic analysis to risk assessment of delayed long-term effects of multiple chemicals including endocrine disruptors in human fetuses."Environ Health Persp. 111. 803-809 (2003)
• [文献書誌] Kubota, R., Kunito, T., Tanabe, S.: "Occurrence of several arsenic compounds in the liver of birds, cetaceans, pinnipeds, and sea turtles."Environmental Toxicology and Chemistry. 22(6). 1200-1207 (2003)
• [文献書誌] Kato, H., T.Ota, T.Furuhashi, Y.Ohta, T.Iguchi: "Changes in reproductive organs of female rats treated with bisphenol A-during the neonatal period."Reprod.Toxicol.. 17. 283-288 (2003)
• [文献書誌] H.Ishibashi, K.Arizono, et al.: "Monitoring of environmental pollutants by a combination of biomarkers in minamata river water using goldfish(Carassius auratus)"Environmental Sciences. 10(3). 175-186 (2003)