研究課題
基盤研究(A)
本科研においては研究会形式でおこなわれる研究分担者およびゲスト・スピーカーの報告を中核に置きつつ、それと並行して文献資料の収集を積極的に行った。研究期間中に21回開催した研究会では、計28本の報告が披露されたが、それらは狭義の美学にとどまらず、哲学、文学、音楽学などへの広がりをもつものであった。そして、これらの諸研究を通して、明治・大正期における日本の近代美学の展開に対する従来の理解を一新させるような、新鮮な風景が展望し得る段階へと到達した。その最終的な成果は、報告書に掲載された研究分担者の論文(以下に題目を列挙する)に着実に反映されている。美妙学における美妙と善美あるいは佳趣論と価値論-西周の啓蒙哲学における美学の一断面、もう一つの<美術>観-日本の美的伝統創出の思想的回路、坪内逍遙における「小説の改良」、『小説神髄』の「美術論」-『小説真髄』をめぐる「美学的」状況について、「作曲」概念の成立をめぐって、日本文化論における茶道の位置-チェンバレンから天心まで、『音樂利害』における「唱歌」の位置、高山樗牛の美学思想、比較と類型-大塚保治の美学、白き道行く-抱月の美学、趣味の領分-雑誌『趣味』における坪内逍遙・西本翠蔭・下田歌子、夏目漱石の文学論における「天才」概念をめぐって-世紀末ヨーロッパ思潮との交差、感覚の能動性をめぐって-明治・大正期における西田幾多郎の美学、和辻哲郎の美学理論における日本的特質の発見-『偶像再興』から「東洋美術の『様式』について」まで、九鬼周造の初期美学における「文學」概念の射程。
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