研究課題/領域番号 |
12302001
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
前野 育三 関西学院大学, 法学部, 教授 (60079639)
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研究分担者 |
酒井 安行 青山学院大学, 法学部, 教授 (50170569)
後藤 弘子 富士短期大学, 助教授 (70234995)
荒木 伸怡 立教大学, 法学部, 教授 (30062665)
服部 朗 愛知学院大学, 法学部, 教授 (40267886)
白取 祐司 北海道大学, 法学部, 教授 (10171050)
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キーワード | パラダイムの転換 / 循環論 / 少年法制の独自性 / 厳罰主義 / 修復的司法 / 加害者・被害者対面方式 / 被害者 / 成長発達 |
研究概要 |
「少年司法の歴史的発達に関する先進諸外国との比較研究」のテーマで共同研究を行ってきた。各国の少年法には一定の時期にパラダイムの転換に伴う大きな変化がある。それがどのような社会条件のもとで、どのような法則性を伴って生じているかを明らかにしようという研究である。本年度は、文献に基づく先行研究の確認、海外調査での有力学者からのヒアリングと資料収集等を精力的に行った。その結果、各国にはそれぞれ異なった発達の特徴があるとともに、一定の共通性があることも明らかになってきた。たとえばアメリカでは、循環論が注目されている。理想主義に基づく少年法制→少年犯罪の増加に伴う厳罰主義世論→厳罰主義的改正、にもかかわらず、少年犯罪は解決せず→少年法制の独自性の再認識、という循環である。アメリカに関して言えば、現在は厳罰論の頂点に近く、次の変化への準備期と捉えることができるであろう。循環論が一定の普遍性を持つとしても、現在どの段階にあるかは各国で異なっているといえよう。 修復的司法への大きな流れも現在の特徴のひとつとして捉えることができるであろう。ニュージーランドでは、修復的司法の考え方と、その基幹的要素である加害者・被害者対面方式が少年司法の中心的な部分を占めている。修復的司法が現在急速に浮上したのにはいくつがの要因が考えられる。(1)被害者に対する配慮を司法の中に位置付ける必要性、(2)刑罰は犯罪少年を改善せず、被害者にも満足を与えない、社会的に無益な制度であるという経験が積まれたこと、(3)犯罪少年の更生、成長発達のためには、被害者に対する責任を感じさせることが必須であるという考え方が強まったこと、などである。現在、修復的司法の捉え方も、上記のいずれに重点をおくかによってかなり異なったものがある。
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