研究課題/領域番号 |
12302001
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
前野 育三 関西学院大学, 法学部, 教授 (60079639)
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研究分担者 |
酒井 安行 青山学院大学, 法学部, 教授 (50170569)
後藤 弘子 富士短期大学, 助教授 (70234995)
斉藤 豊治 東北大学, 大学院・法学研究科, 教授 (00068131)
荒木 伸怡 立教大学, 法学部, 教授 (30062665)
新倉 修 青山学院大学, 法学部, 教授 (10119050)
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キーワード | 少年司法 / 修復的司法 / 厳罰化 / 教育 / 福祉 / 拘禁の回避 / 被害者 / 加害者 |
研究概要 |
本年度は4回の全体研究会といくつかの研究班ごとの研究会を行なうとともに、多くの海外出張で、対象各国の少年法の制度と運用実態の細目を調査することができた。それらを通じて明らかになったことのいくつかを取り上げておきたい。 1980年代を中心に少年に対する刑罰化ないし厳罰化の傾向が進んできたが、第一に、多くの国でその動きは一段落し、第二に、少年の福祉と教育の充実への新たな動きが出始めていることと、第三に、修復的司法が従来よりもいっそう大きな流れとして定着していることが、大きな特色として指摘できる。 少年に対する厳罰政策への批判は、厳罰政策の最も進んでいたアメリカにおいて顕著に見られ、そのための著書・論文も多い。たとえば、Franklin E. Zimring, American Youth Violence, Oxford University Press, 1998.等である。また、少年に対する福祉・教育の重視については、ドイツ、フランスなどのヨーロッパ大陸諸国で健在ないし強化が印象付けられる。厳罰傾向を止めることは、一般には拘禁を避けることと関連している。拘禁を避ける手段として、電子発信装置を身体に装着して、刑事施設外で生活させる方法は、一般には、いっそう広く採用されるにいたっているが(スウェーデン等)、少年に対しては行なわれていない。それは、教育の理念と矛盾するところがあるからであろう。 修復的司法の採用は、多くの国々で成人よりも少年について先行している。アメリカ・ミネソタ州での調査を通じて、修復的司法の実際の手法に触れ、世界の動向について、最新の情報に触れたことは大きな成果であった。 本年度は、歴史的研究よりも、少年司法の制度面と実態面の調査が進んだ結果になったが、来年度以降、歴史的研究に重点を移したい。本年度の研究はそのためにも重要である。
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