研究概要 |
昨年度は,組織型顧客価値創造活動についての概念を整理し,その後,特に日本企業を対象に探索的事例研究を行った。我々は,組織型顧客価値創造活動は,顧客接点である営業部門を基点に行われると仮定し,調査を行った。その結果,営業活動は主に二つの次元で整理できることが明らかになった(小川)。一つは営業活動の結果(成果)を重視するものとその過程を重視するもの,そしてもう一つは,個人として営業活動を重視する管理と組織としてのそれを重視する管理というものである。昨年度の探索的事例研究では,日本企業の営業の現場では,顧客価値創造のために,成果重視の営業から過程重視の営業へ,そして個人重視の営業から組織重視の営業へとシフトが起こっていることが確認された。 本年度は,以上のような成果をもとに,生産財企業を対象に質問票調査を実施した(高嶋)。その結果,以下の3点が発見された。第一に,企業の営業の現場では既存顧客データベースが顧客との関係性を構築するために整備されていること,第二に,そのような顧客データベースを通した公式的で単純化された情報交換が,営業を越えた部門間や営業部門内の非公式な情報交換のプラットフォームになっていること,最後に,そのことが営業部門と他部門や営業部門内でのコミュニケーションを促進させていることである。以上のような結果は,営業の過程管理や顧客データベースの構築が,営業活動だけに留まらず複数部門を横断する事業レベルあるいは企業レベルでの顧客価値創造活動に貢献していることを示唆している。 以上のような成果を受けて次年度は,本年度の発見物の一般化可能性を検証し,他方で理論の修正・拡張を行うことを予定している。具体的には石井・加登は消費財メーカーの視点から,小川は流通企業の視点から,高嶋は産業財の視点から実証研究を行い,丸山はそれらの発見物に対する理論的分析(経済モデル分析)を行う。以上が来年度の予定である。
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