研究課題
本研究は、わが国の小・中・高校生の学力の実態を時代的推移と国際比較の観点から具体的に明らかし(課題A)、彼らのたしかな学力を養成するための実践的方途を探求しよう(課題B)とするものである。本年度は、3年計画の初年度にあたる。まず、課題Aについては、以下の3つの作業を行った。1)学力論争と学力調査のレビュー:戦後のわが国の学力論争史をたどり、学力概念の整理を行うと同時に、わが国で実施されてきた全国・地方両レベルでの各種の学力調査を収集し、その特徴を検討した。2)事例研究:特定の地域(鹿児島県)を対象とし、最近2度の学習指導要領の改訂が教育現場にどのような影響を与え、児童・生徒の学力にどのような変化をもたらしたかに関するケーススタディーを実施した。3)海外調査:海外での教育改革の動向と学力問題の現状を探るために、イギリスと台湾の2カ国で現地調査を実施した。これらの作業を下敷きにして、次年度以降で、具体的なわれわれのグループの学力・学習状況調査を実施する予定である。課題Bについては、今年度は、「認知カウンセリング」の可能性の追求という観点から研究活動を展開した。認知カウンセリングとは、学校の勉強がわからなくて困っている児童・生徒の教科学習の援助を、研究者や教師が、認知心理学や教育心理学をベースに行う活動を意味するものである。本年度は、首都圏の3つの中等教育機関において、その学校現場への展開を試みた。次年度は、その経験をもとに、学習相談の事例を授業に生かしていく方法を、教師とともに考えていく体制づくりに着手する予定である。