前近代東アジア海洋域圏の比較史的研究-日・中・朝三国の政治・社会的連環-

2000 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 12410095
• 研究機関: 京都女子大学
• 研究代表者: 植松 正 京都女子大学, 文学部, 教授 (10036030)
• 研究分担者: 坂口 満宏 京都女子大学, 文学部, 助教授 (30298682) ; 檀上 寛 京都女子大学, 文学部, 教授 (60163721) ; 永田 英正 京都女子大学, 文学部, 教授 (90027532) ; 田中 俊明 滋賀県立大学, 人間文化学部, 助教授 (50183067) ; 松浦 章 関西大学, 文学部, 教授 (70121895)
• キーワード: 地域社会 / 海禁 / 海防 / 海運 / 倭寇 / 華僑 / 海洋域圏 / 朝貢

研究概要

本科研は平成12年秋に採用されたため、本年度は限られた時間しかなく、やむなく次年度以降の本格的調査・研究に備えて、資料と情報の収集に努めることとした。一つは、12年末に総勢5名の調査団を組み、中国北京を訪問して社会科学院歴史研究所・近代史研究所、歴史博物館等で資料の調査を行ったことである。その際、研究協力者である歴史研究所の陳高華氏(元代史)、近代史研究所の張徳信氏(明代史)等からは、今夏予定している江南地方の調査のための詳細な情報を得ることができた。両氏とはその後も逐一連絡を取り合い、新たな情報の提供を受けている。
また、13年3月には再び5名の調査団を組み、長崎五島の調査を行った。五島は遣唐使の時代以来、中国との関係が深く、関連の史跡も少なくない。とりわけ倭寇関係の史跡は勘次ケ城を初め多数あり、倭寇王王直が居宅を構えて舟山との間を往来したように、中国浙江との関係も密接である。単なる日本の西端の地ではなく、東アジア海洋域圏の東方の要地として捉えなおすことで、新たな五島像も結ばれることであろう。
この他、本研究関連の論文も数編発表することができたが、中でも植松は元代浙西の地域社会を中心に海運の問題を分析し、檀上は同じく元末の海運を浙東の地域社会に即して考察した。また松浦は清代の航運業について一連の論文を発表し、数年来続けている漂流民の問題に関しても新知見を加えている。また、永田・坂口・田中もそれぞれ担当のテーマに即して研究を進めつつあるが、今後実地調査を重ねることで、より密度の濃い内容にしたいと考えている。

研究成果

• [文献書誌] 植松正: "元末浙西地方の税糧管轄と海運との関係について"史窓. 58号. 111-118 (2001)
• [文献書誌] 永田英正: "礼忠簡と徐宗簡研究の展開-居延新簡の発見を契機として-"史窓. 58号. 97-110 (2001)
• [文献書誌] 檀上寛: "「明帝国と倭寇」解説"中公文庫『中国文明の歴史』. 8巻. 395-411 (2000)
• [文献書誌] 檀上寛: "元末の海運と劉仁本-元朝滅亡前夜の江浙沿海事情-"史窓. 58号. 119-130 (2001)
• [文献書誌] 坂口満宏: "日本人社会ネットワーク-北米日本人会の組織と活動を中心に-"史窓. 58号. 83-96 (2001)
• [文献書誌] 坂口満宏: "帰米二世をめぐる断章-シアトル帰米日系市民協会の組織と活動を中心に-"移民研究年報. 7号. (2001)
• [文献書誌] 松浦章: "清代四川の民船航運業について"関西大学文学論集. 49巻3号. 11-41 (2000)
• [文献書誌] 松浦章: "清代北京の同郷・同業会館碑刻資料について"関西大学博物館紀要. 6号. 27-36 (2000)
• [文献書誌] 松浦章: "清代雍正期の童華『長崎紀聞』について"関西大学東西学術研究所紀要. 33輯. 41-60 (2000)
• [文献書誌] 松浦章: "上海図書館所蔵の档冊について"満族史研究通信. 9号. 107-114 (2000)
• [文献書誌] 松浦章: "朱印船の中国・朝鮮漂着をめぐって"南島史学. 55号. 17-35 (2000)
• [文献書誌] 松浦章: "徽州汪寛也与上海棉布"中国社会経済史研究. 2000年4期. 67-75 (2000)
• [文献書誌] 松浦章: "清代大運河の航運について"関西大学東西学術研究所紀要. 34輯. 1-15 (2001)
• [文献書誌] 松浦章: "清代江南・江北の行舟航運"関西大学文学論集. 50巻3号. 1-45 (2001)
• [文献書誌] 松浦章: "徽州汪寛也と上海棉布"関西大学博物館紀要. 7号. 1-11 (2001)
• [文献書誌] 田中俊明: "古朝鮮から三韓へ"『新版世界各国史2 朝鮮史』山川出版社. 13-48 (2000)
• [文献書誌] 田中俊明: "百済後期王都泗〓の防禦体制"『泗〓都城と百済の城郭』書景文化社、ソウル. 133-154 (2000)
• [文献書誌] 田中俊明: "栄山江流域の前方後円形古墳の性格"『栄山江流域古代社会の新たな照明』木浦大学校博物館、光州. 195-211 (2000)