研究分担者 |
國府 寛司 京都大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (50202057)
重川 一郎 京都大学, 大学院・理学研究科, 教授 (00127234)
大鍛治 隆司 京都大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (20160426)
森岡 達史 大阪大学, 大学院・理学研究科, 助手 (80239631)
西谷 達雄 大阪大学, 大学院・理学研究科, 教授 (80127117)
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研究概要 |
今年度は主として,研究実施計画の(a)および(b)の課題主としてに取り組んだ.すなわち,いくつかの凸な物体の外部における古典力学のゼータ関数の有理型について,およびこのゼータ関数に含み込まれているカオス性と波動の関連である.古典力学のゼータ関数の絶対収束軸を越えての解析接続は,最近再び世界の注目を集める課題となっている.この問題への突破口として,我々は2個の凸な物体に捕捉される幾何光学軌道の挙動を,正確に記述する方法を見つけ出した.それは,各反射点の位置が反射の回数が増えると,それに連れて周期軌道に指数的速さで収束することは,我々は10年前に見つけ出していた事である.今回我々が得た精密な結果は,反射点の個数を用いて各反射点の位置を,正確に記述する方法である.これは,この課題を申請する時に,基本的な部分は取り出していたが,表現を明確に与えるには,多くの整理が必要であった. 今年度はそれを用いるに容易となる明確な表示式を求める手順を明かにした.この明かにされた表示式をを用いると,一般個数の凸な物体の外部での古典力学のゼータ関数の,より具体的表示が可能となり,有理型性はその表示より直接に導ける可能性をはっきりと示している.すなわち物体の個数が3以上の場合は,この外部での古典力学はカオス的となり,ゼータ関数の表示が難しく,その解析接続の可能性も分かっていなかった. この直接的表示式は,ゼータ関数の極の場所を求めるのにも有用である可能性を持っている.もし,ゼータ関数の極を具体的に表示できれば,カオス的現象の本質を解明する第一段と成り得るであろう. さらに,我々の得た2つの物体の間の古典軌道の直接的表示を与える方法は,ゼータ関数と波動方程式の解,すなわち波とを結び合わせる要の役を果たし,双方の関係を解明するための極めて有力な道具となるものと期待している.来年度は,この関係を中心に研究する予定である.
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