研究分担者 |
深谷 賢治 京都大学, 大学院・理学研究科, 教授 (30165261)
河野 明 京都大学, 大学院・理学研究科, 教授 (00093237)
西田 孝明 京都大学, 大学院・理学研究科, 教授 (70026110)
辻井 正人 北海道大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (20251598)
中原 敬子 京都大学, 大学院・理学研究科, 助手 (90155797)
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研究概要 |
今年度の研究実績は次の通りである: 力学系の大域的な構造とその分岐を位相的に調べる上で有効なConley indexの理論を,slow-fast系と呼ばれる特異摂動的ベクトル場に対して拡張する試みとして,遅い変数が1次元の場合に,Conley indexの理論で重要な役割を果たすtransition matrixを特異摂動的ベクトル場に適用できるように拡張し,さらにそれをこれまでの研究成果と合わせることにより,周期軌道やヘテロクリニック軌道の存在を検証する一般的な方法としてまとめることができた.またその結果をゆっくりと変化する平面上のハミルトン系における複雑な振舞いの解析に用い,その具体的な問題に応用して有用性を示した.今後はこれをより一般の遅い変数が2次元以上の場合に拡張することが課題となるが,そのために必要となると思われるので,手始めとしてtransition matrixの余次元2以上のconnecting orbitの場合への拡張を行なった. ベクトル場の大域的構造とそれに密接に関わるカオス的振舞いの解析を行なった.まず,単純な対称性を持つベクトル場のクラスにおいてある退化した特異性からある種のヘテロクリニック軌道のサイクルが分岐によって出現すること,またそれに伴っていわゆるLorenzやHenonのカオス的アトラクタがそこから分岐することを示した.また,対称性を全く仮定しない退化特異性について同様の解析も行なった.この特異性は対称性による付加的な情報がないためにその解析は著しく困難になり,その分岐の全貌を調べることは現時点でははるかに遠く及ばないので,これまでに様々な文献において得られた結果を統一的な視点から整理し,今後の研究に重要であると思われる課題を問題や予想という形で述べた.
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