研究課題/領域番号 |
12440048
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
中原 敬子 京都大学, 大学院・理学研究科, 助手 (90155797)
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研究分担者 |
新居 俊作 九州大学, 大学院・数理学研究院, 助教授 (50282421)
松岡 隆 鳴門教育大学, 学校教育学部, 教授 (50127297)
宍倉 光広 京都大学, 大学院・理学研究科, 教授 (70192606)
石井 豊 九州大学, 大学院・数理学研究院, 助手 (20304727)
辻井 正人 北海道大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (20251598)
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キーワード | 力学系 / 分岐 / 大域的構造 / 位相的方法 / カオス / 複素力学系 / 無限次元力学系 / 数理物理 |
研究概要 |
今年度に得られた主な研究成果は以下の通りである。 宍倉は円周上の無理数回転をベースとする円環上のskew productについて、有界変動の条件の下で、写像が極小不変集合をもつことと、完全可積分型であることの同値性を示した。またいくつかの条件の下で、非可積分で極小不変集合をもたないような写像はgenericであることも示した。 松岡はコンパクト有向曲面上の同相写像で、恒等写像とイソトピック(連続変形可能)なものの不動点の位相的性質について研究した。写像が有限個の不動点をもつとき、それらの不動点指数の和は曲面のオイラー標数に等しいことはよく知られている。ここでは、不動点指数以外に、位相不変量の一つである組ひも不変量も用いて不動点の位相的性質について調べ、不動点の指数についてのより詳細な情報を得た。さらに、不動点の安定性と写像のカオス性に関する成果を得た。 辻井は2次元の部分双曲的力学系について次のような結果を得た。臨界点を持たない2次元多様体上の部分双曲的写像の力学系はgenericに有限個の不変測度を許容し、その吸引領域の全体は多様体上のリーマン体積についてほとんど至る所の点を含む。さらにその不変測度の2つのリヤプノフ指数の和が正であればその測度はリーマン体積について絶対連続になる。 石井は物理学者の首藤啓氏(東京都立大学)と池田研介氏(立命館大学)らと共に、一次元半古典系におけるトンネル効果とそれに対応した複素Henon写像の力学系との関係を研究した。一般に量子力学の複素半古典論において、ある粒子の遷移確率は複素二次元空間(すなわち相空間)内の経路積分として表され、その積分に寄与しているものの実平面に含まれない経路全体がトンネル効果を記述すると考えられている。このような寄与経路全体と,Hamilton方程式のPoincare断面として得られる複素Henon写像の前方Julia集合との対応関係を、数学的に一部正当化した。
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