研究分担者 |
松岡 隆 鳴門教育大学, 学校教育学部, 教授 (50127297)
辻井 正人 北海道大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (20251598)
宍倉 光広 京都大学, 大学院・理学研究科, 教授 (70192606)
小室 元政 帝京科学大学, メディアサイエンス学科, 助教授 (00186818)
平出 耕一 愛媛大学, 理学部, 助教授 (50181136)
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研究概要 |
当該研究期間に本研究で得られた成果は大別して以下の4点にまとめられる:(A)力学系のエルゴード的性質に関する研究成果;(B)力学系の位相的性質に関する研究成果;(C)大自由度系および無限次元力学系に関する研究成果;(D)力学系の複素解析的方法に関する研究成果.これらについて簡単に要約する. (A)では辻井を中心に多次元区分拡大的写像および部分双曲的写像の不変測度について研究し,区分拡大的写像については写像の微分可能性と不変測度の性質との間の興味深い関係や例を見出した.また2次元の部分双曲的写像については力学系の構造を反映した不変測度の存在を証明した. (B)では松岡,平出を中心に研究を行い,余次元1のアノソフ微分同相写像や力学系の周期軌道の定める結び目や絡み目,組み紐の構造について調べた.特に松岡はコンパクト有向曲点面上の同相写像で,恒等写像とイソトピック(連続変形可能)なものの不動点の位相的性質について研究し,それを用いて不動店の安定性と写像のカオス性に関する成果を得た.また宍倉は円周上の無理数回転をベースとする円環上の歪積について,有界変動の条件の下で,写像が極小不変集合をもつことと,完全可積分型であることの同値性を示した. (C)については小室や岡本久(京都大学数理解析研究所),新居俊作(九州大学数理学研究院)によって行われ,特に小室はカオス遍歴と呼ばれる大自由度力学系に特徴的に見られる非周期的振舞いを大域結合写像系と呼ばれるモデルについて研究し,その構造を対称性と不変部分空間を用いて記述した. (D)では宍倉,木坂正史(京都大学大学院人間環境学研究科)や石井豊(九州大学数理学研究院)を中心に研究を行った.このうち宍倉は複素力学系に現れるフラクタルのルベーグ測度やハウスドルフ次元を調べ,更にそれが放物型不動点の分岐によって不連続に変化することを示した.木坂は構造有限な超越整関数の力学系や超越整関数の遊送領域についていくつかの結果を得た.石井は複素Henon写像の双曲性の具体的な判定条件や,量子カオスに関して量子トンネル効果と高次元複素力学系との関係を明かにした.
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