本研究は職場における電磁界曝露評価を目的としており、本年度は主として電気溶接を対象として、磁界測定用のメータを製作し、磁界の測定・解析を行った。電気溶接では炭酸ガス溶接のように直流電源を使用する場合、従来からよく使用されている交流用のメータによる磁界測定は直流分が検出できないので、本研究では直流分に重畳した交流分の磁界波形を検出するためにホール素子を使うことを検討した。検出感度を上げるために複数個のホール素子を直列に使う回路を試作し、直流分を含む磁界の測定値(実効値)を表示すると共に、アナログ端子を取り出し、ポータブルオシロスコープによる波形観察を可能にした。校正を行った後、直流溶接現場での試験に供し、溶接工の曝露磁界に対する電源ケーブルの配線方法の影響を定量的に明らかにした。また、溶接時の曝露磁界の間欠性について十分なデータを収集することができた。 電力線のスペーサ点検作業の実態を観察し、作業者の電界曝露の定量的解析を行う準備を行った。作業者を導電性の回転楕円体で模擬し、それと4導体との位置関係を線路走行中の姿勢とスペーサ点検時の姿勢に分けて電界計算を行うこととした。4導体から飛ぴ出した人体の表面電界が高くなること、および4導体に囲まれた部分の電界は遮蔽される、ことなどが定量的に明らかになった。電力作業での磁界曝露についての解析も合せて行ない、実際の作業に際して曝露される磁界の解析について今後の見通しを得ることができた。電力作業員は電界と磁界に曝露されることが多いので、体内誘導電流の解析には両者を同時に考慮して行うことの重要性について指摘した。
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