研究概要 |
当該研究課題に関し,平成12年度においては以下の4つの項目について検討を行った。 (1)各種配合ならびに混和材を用いたモルタルによる溶出挙動に関する検討 各種配合ならびに混和材を用いたモルタルによる溶出挙動の把握では、各配合のモルタル供試体を最大2年を経過した溶出実験をおこない、水セメント比や混和材の影響による水和物の組成ならびに硬化体の緻密性の変化が溶出に大きく影響を及ぼすことが判明した。 (2)実構造物における溶出挙動の把握 新潟県に現存する大河津分水路(1920年代に竣工)のコンクリート構造物から経過年数および環境条件が異なるコアを採取し、曝露面から水和物の残存量ならびに変質調査をおこなった。これより、河川水に80年間程度曝されたコンクリートでは、3cm以上にわたり溶出に伴う水和物の変質ならびに物性の低下が認められ、さらに、気中環境下における炭酸化によって生じる水和物の分解作用は、溶出に伴う水和物の分解作用に対して著しく大きいことが判明した。 (3)長期間水中環境下に曝されたモルタルからの溶出挙動の把握 20年間水中養生されたモルタル供試体を用い、各種水和物の残存濃度について分析をおこなった。これより、モルタル表面に析出された炭酸カルシウム層の被膜によって溶出の進行は殆ど認めらず、水中に溶存するイオンの影響が溶出に大きく影響を及ぼすことが判明した。 (4)長期間屋外環境下に曝されたコンクリートからの溶出挙動の把握 10年間屋外に曝された供試体について、曝露面から水和物の変質調査をおこなった。これより、屋外の環境下の雨水によってもたらされる溶出の影響は微量であることが明らかになった。さらに、各実験を通じて、曝露面近傍において生じるイオン濃度の濃縮現象が溶出挙動に大きな影響を及ぼしていることが認められた。
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