研究概要 |
当該研究課題に関し,平成13年度においては以下の項目について検討を行った。 (1)実構造物における溶出挙動の把握 新潟県内の大河津分水路(1920年代に竣工)のコンクリート構造物から,壁部材の全長1300mmにわたってコアコンクリートを採取し、曝露面から水和物の残存量ならびに変質調査をおこなった。これより、河川水に80年間程度曝されたコンクリートの水酸化カルシウム,カルシウムシリケート水和物ならびにモノサルフェート水和物などの各残存量と空隙量の分布を測定し,長期間を経たコンクリートの変質状況についての詳細な調査を行い,予測モデルの検証のデータベースを作成した。 (2)予測モデルの構築と検証 固-液間の平衡理論に基づき,カルシウム成分の溶脱現象を表現可能なモデルの構築を行った。なお,昨年度に実施した各実験結果および(1)で示した実構造物の分析データを用いて本モデルの検証を尾行い,モデルの妥当性を確認することができた。 (3)外部環境の変化がカルシウムの溶脱に及ぼす影響に関する検討 実際の構造物が曝される環境を想定し,硝酸(HNO_3)および硫酸(H_2SO_4)を混合した酸性雨成分環境下におけるカルシウム成分の溶脱メカニズムに関する検討を行った。この結果,通常の蒸留水環境下における溶脱過程とは異なり,酸性雨成分環境化においてはセメント水和物の種類による溶解順序が変化することが明らかとなること,また,酸性雨成分の強さ(pHの大小)によって溶脱の程度が異なることなどを明らかにした。
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