研究概要 |
夏場湖沼において発生するアオコは景観的にも環境衛生的にも大きく問題となっている。より環境に負荷の少ないアオコの防除法を確立するために淡水産藍藻を殺滅する細菌を単離し、その産生する殺藻物質の構造を明らかにすることを目的とした。 0.5%カシトンCB寒天培地上に形成したコロニーを、藍藻Anabaena cylindrica(NIES-19)を生育させたCB寒天培地上に上野不忍池、および九段下皇居外堀の表層水を接種し、プラーク形成能の有無で殺藻活性を評価した。約8000コロニーを上記のアッセイに付し、16株の殺藻細菌が得られた。16S rDNAの配列を解析した結果、そのうち9株がPseudomonas属の細菌であった。得られた16株について殺藻活性の評価を行ったところ、Pseudomonas属の細菌5株のEtOAc抽出物に活性が見られた。最も活性の強かったPseudomonas sp.Q44-1株を0.5%カシトンCB培地で3日間培養し、殺藻物質の単離を試みた。活性物質の構造はFABMSおよびNMRなどの機器分析により決定し、既知化合物の1-methyl-β-carbolineであると同定された。1-methyl-β-carbolineをペーパーディスク法による殺藍藻活性試験に付したところ30μg/diskで殺藻活性を示した。 また、M.aeruginosa(NIES-478,TAC-51,TAC-91)よりaminopeptidase M(APM)およびangiotensinconverting enzyme(ACE)に阻害活性を示すmicroginin類縁体を8種類新たに単離し、立体を含めて構造を決定することができた。これらのペプチドとこれまで当研究室で得られたmicroginin類および部分分解物の両酵素に対する阻害活性を測定した。
|