研究概要 |
ウシエビ筋肉からアラニンラセマーゼを単離した.精製度は120,000倍で,収率は16%であった.精製酵素の分子量はSDS-PAGEで45kDa,ゲル濾過では90kDaで,二量体と考えられた.精製酵素を断片化して幾つかのペプチド断片を精製し,部分一次構造を決定した.これらペプチドのアミノ酸配列は細菌類の同酵素との相同性が認められたが,40%以下の相同性であった.本酵素はピリドキサールリン酸を添加しなくても活性を示し,添加により僅かに活性化された.アミノオキシ酢酸やヒドロキシルアミンには阻害されるものの420nmの吸収はなく,細菌類の酵素とはかなり異なるものと考えられた. 魚類のD-アミノ酸およびD-アスパラギン酸オキシダーゼの分布は種特異的で,食性との関連が認められた.D-アラニンあるいはD-グルタミン酸をコイに1ヶ月間投与したところ,消化器官,肝臓および腎臓の活性が上昇し,少なくとも魚類ではD-アミノ酸オキシダーゼは誘導酵素であることが明らかになった.また,両酵素ともペルオキシソーム局在性であることが判明した. アメリカザリガニを1/2および3/4海水に順応させたところ,アミノ酸総量は1.8倍に増加し,Gln,Pro,Gly,Alaが細胞内等浸透調節のための主要なオスモライトであった.クルマエビおよびハマグリを50〜150%海水に順応させたところ,前者ではGlyとAla,特にGlyの増加が顕著で,後者ではAlaのみが増加を示した.いずれの場合もAlaの約半分はD-Alaで,D-Alaは強力なオスモライトであることがわかった.
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