研究概要 |
ウシエビのアラニンラセマーゼの部分アミノ酸配列からペプチド抗体を作成し,クルマエビ組織切片を作成して細胞内分布を調べた.また,クルマエビ筋肉および肝膵臓から全RNAを抽出し,3'RACE法によりクローニングを行っている. D-アラニンを2週間投与したコイ肝膵臓から全RNAを抽出し,D-アミノ酸オキシダーゼのcDNAクローニングを行った.PCR産物は801bpでアミノ酸267残基をコードしていた.ヒトおよびブタの同酵素とは58-59%の相同性を示し,細菌類のそれとは28-33%の相同性であった. アメリカザリガニを0,50および75%海水に順応させると,D-,L-アラニンは等浸透調節のオスモライトの一つとして顕著に増加するが,それぞれの段階で12時間無酸素状態に保持すると,筋肉および肝膵臓においてD-,L-アラニンが乳酸と共に増加し,D-,L-アラニンはアメリカザリガニにおいては嫌気的代謝の最終産物の一つでもあることが判明した.クルマエビの50,100および150%海水中での48時間の嫌気状態ではわずかな乳酸およびD-,L-アラニンの増加のみが認められ,低温下では代謝抑制により嫌気状態でも長時間の生存が可能であることが判明した. チョウセンハマグリの浸透ストレスにより,D-,L-アラニンおよびグリシンの顕著な増加が認められた.筋肉ではD-,L-アラニンが,また中腸腺ではグリシンの増加が顕著であった.150%海水中では足筋および中腸腺でグルタミン酸の増加も認められた.タウリンは主要な遊離アミノ酸であったが,閉殻筋と中腸腺では150%海水中で増加を示したものの,足筋では変動を示さなかった.一方,6日間の低酸素ストレスおよびその後の2日間の回復過程で,いずれの海水順応個体もやや高いD-,L-アラニン,コハク酸およびプロピオン酸含量を示し,これらが嫌気的代謝の最終産物と考えられたが,大きな増加はなく,やはり低温下において代謝が著しく抑制されることが明らかであった.
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