研究概要 |
体内で生体の重要な物質の輸送には多くの輸送蛋白が関与している。我々は輸送体の変異および健康影響に注目した。 1.Lysinuric Protein intoleranceは塩基性アミノ酸の突然変異によっておこるとされていて、早期治療によって障害を抑制し得る。塩基性アミノ酸の輸送体であるSLC7A7に関して検討を行い、Intron-exon構造を含めたGene structureを明らかにした。さらに、SLC7A7の異常により生じる疾患であるLysinuric protein intolerance(LPI)患者の遺伝子変異を検索した。 2.Lysinuric protein intolerance患者が極めて多く見つかる岩手県北部の遺伝疫学をR410X変異が創始者変異であることを見出し実際にマススクリーニングを行なった。また、重要な機能を担う蛋白の異常を、遺伝疫学および動物実験で検討した。 3.遺伝疫学では、Osler-Rendu-Weber病,のう胞腎、新たな疾患である甲状腺腫について、トランスポーターの検討を行った。 4.重要な機能を担う蛋白の変異については、プロインスリンの変異について、生化学的手法で正常型に比べて強い疎水域が蛋白表面に露出することによっと膵臓内のβ細胞でERストレスを引きおこす機序のを検討した。その結果を基に動物実験でβ細胞のインスリン分泌不全について検討した。 歴史的、文化的な隔離により多くの遺伝性疾患の頻度は大きく異なる。今後、わが国における遺伝疫学の展開とともに、遺伝子群の突然変異の結果生じる蛋白質における構造異常と病態の関連の解明が望まれる。
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