研究概要 |
本年度はアルコール依存症の多様性を考慮し、アルコール離脱症状として振戦譫妄、幻覚、痙攣発作を示した患者の遺伝的リスク因子を見い出すことを目的として、CCKA受容体(CCKAR)、CCKB受容体(CCKBR)およびCCK遺伝子の転写制御領域および翻訳領域を系統的に分析し、多型性変異を検索した。 1)CCKAR遺伝子promoter領域の多型との相関を調べた結果、幻覚を示した患者群では、-388(GT)_8(p=0.0095)と-85C(p=0.0087)の頻度が対照群に比べて高く、有意差が見い出された。また、遺伝子型に関して比較した場合、-85CCと幻覚との間で強い相関が認められた(p=0.0031)。幻覚を示した群との間に強い相関が認められる-85 locus部位は転写因子Lyf-1が結合する配列(TCTGGGAGA)の候補となっており、この部位の変異は遺伝子の転写に影響を与える可能性がある。さらに幻覚positiveの群とnegativeの群との間で比較した場合、-388locusと-333locusに関しそれぞれ有意な相関が見出された(P<0.03,P<0.02)。2)CCKBR遺伝子では従来の報告に加え、新たに3種類の変異が検出された(-112G→A,-50G→T,Gly138Val)。しかしながらこれらの多型の遺伝子頻度について、各離脱症状(振戦譫妄、幻覚、痙攣発作)を示した群と対照群の間に有意差はなかった。3)CCK遺伝子では、promoter領域の-45C→Tについては-45Cをもつ個体(CC,CT)が幻覚を示した患者群に多く認められたが、遺伝子頻度で比較した場合有意ではなかった。
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