研究概要 |
本研究ではADH2, ALDH2 CYP2E 1のpromoter領域の塩基配列変異を解析しアルコール代謝、飲酒量との関連を調べた。また、アルコール大量飲用が強度の細胞への酸化的ストレスを誘発し、その結果生じるスーパーオキシドや細胞毒性物質がDNA損傷や細胞変性を起こさせる可能性がある。我々はアルコールによる酸化的ストレスがアルコール依存症の原因となるという作業仮説のもと、細胞毒性物質を無害化する第二相解毒酵素の遺伝子変異とアルコール依存症との相関も調べた。 1)ALDH2 promoter領域中には-357G→Aの塩基置換が多型として見出された。末梢血中の有核細胞から抽出したmRNAをRT-PCR法にて測定したところ、β-actinとALDH2とのcDNAの比はGG:1.65, GA:1.05, AA:0.90となりGGはAAより有意に高い値を示した。更に、この遺伝子型と飲酒量をALDH2*1ホモ接合型をもつ人の間で比較すると、G型遺伝子をもつグループ(GG+GA)は18.30リットル(年/人)となり、A型ホモ接合型は10.15リットル(年/人)となり、両群の間に有意差があった。 2)内因性神経毒性物質Aminochrome (o-quinone)を代謝する第II相解毒酵素であるGlutathione S-Transferase M1(GSTM1), NADH-Quinone oxidoredactasel(NQO1)およびNRH-Quinone oxidoredactase 2(NQO2)遺伝子の多型性変異と離脱症状との相関研究を行った。GSTM1 deletionは患者群にうち痙攣発作を示した群と示さなかった群との間ではDD型が新たに高い頻度で検出された(P=0.0032)。NQO1の多型性変異に関ついてはアルコール依存症との相関性は否定された。NQO2のプロモーター領域中の29bp基からなるI/D多型に関しては健常群との間での有意差か再確認された(P=0.0029)。同様に、遺伝子型により比較した場合、幻覚を示した患者群(P=0.0001)、振戦譫妄を示した患者群(p=0.0004)および痙攣発作を呈した患者群(p=0.0067)の頻度が対照群に比べてDD型頻度が有意に高かった。一方、末梢血有核細胞中におけるNQO2のmRNA発現量はII型の濃度はIDおよびDDに比べ有意に高いことが示唆された。この多型部位は転写因子Sp1が結合する配列(GGGCGGG)が4回反復して存在する領域であり、この部位の欠損は遺伝子の転写に影響を与える可能性を示唆する。
|